プリフロップで自分が最初に参加する(Open raiseする)ときの考え方
前回の記事「プリフロップ参加レンジ」において、下記5つの状況でのプリフロップの参加レンジをご説明しました。
[おさらい:Poker snowieのPreflop Advisorで紹介されているハンドレンジ]
①自分が一番最初に参加する(Open raiseする)ときのハンドレンジ
②前に誰かがOpen raiseした場合のハンドレンジ
③自分のレイズに対して相手が3betしてきたときのハンドレンジ
④自分の3betに対して相手が4betしてきたときのハンドレンジ
⑤自分がSBorBBで、前に2人参加している(Open raiseとそれに続くCallがある場合)ときのハンドレンジ
「①自分が一番最初に参加する(Open raiseする)ときのハンドレンジ」の重要性
①~⑤の全てを覚えているに越したことはないのですが、初学者は最初に①を覚えることをおすすめします。
理由はシンプルで、ホールデムをプレイする中で①の、「自分に回るまで他プレイヤーが全員Foldして、自分が最初にレイズをするかどうか迫られる」という状況に一番多く直面するからです。
具体的にどのくらいの頻度で①の状況が訪れるのか簡易的に計算してみましょう。
例えば6人でプレイしている場合は下記の通りに計算できます。
今回は計算をシンプルにするために、自分以外の他プレイヤー全員が、UTG,MP,CO,BU全てにおいて20%の確率でOpen raiseし、自分より先に誰かがOpen raiseしたら必ずFoldする、と仮定してみましょう。(リンプインは想定しない)
[自分がUTGの場合]
プリフロップにおいて自分が100%一番最初にアクションするので、①の状況におかれる可能性は当然100%です。
[自分がMPの場合]
UTGがOpen raiseをせずにMP(自分)まで回ってくる確率なので、0.8 80%の確率で①の判断を迫られます。
[自分がCOの場合]
UTGとMPがOpen raiseをせずにCO(自分)まで回ってくる確率なので、0.8×0.8=0.64 64%の確率で①の判断を迫られます。
[自分がBUの場合]
UTGとMPとCOがOpen raiseをせずにBU(自分)まで回ってくる確率なので、0.8×0.8×0.8=0.512 51%の確率で①の判断を迫られます。
[自分がSBの場合]
*BUが20%しかOpen raiseしないというのはあまりにタイトな想定なので、BUのOpen raiseレンジは全体の40%と仮定して計算します。
UTGとMPとCOとBUがOpen raiseをせずにSB(自分)まで回ってくる確率なので、0.8×0.8×0.8×0.6=0.3072 30%の確率で①の判断を迫られます。
[自分がBBの場合]
UTGからSBの全てのプレイヤーがOpen raiseしない場合、BB以外の全てのプレイヤーがFoldしたことになるので、ゲームは行われません。
上記の通り、各ポジションにおいて無視できない確率で①の状況で判断を迫られます。本来は各ポジションでのOpen raise頻度は20%より高いはずだ、という主張もあるかと思いますが、それでも高い確率で判断を迫られるという結論に変わりはありません。(どうしても検証したい、という方はOpen raiseの確率を30%に変更して、上記の計算の0.8の部分を0.7に置き換えてみてください)
ここまでで「①自分が一番最初に参加する(Open raiseする)ときのハンドレンジ」の重要性を感じていただいたかと思います。
①のハンドレンジは、前記事でPoker snowieのPreflop Advisorとして紹介しており、こちらのツールを使ってひたすらホールデムをプレイしていれば大体のハンドレンジは覚えられると思います。
ただし、ホールデムにおいて重要なのはハンドレンジやある局面での最適なアクションを暗記することではなく、なぜそのハンドレンジがよいのか、なぜこの局面でこのアクションをとることが最もEV(Expected Value)が高いのか、など背景にある理由を理解することです。
背景や裏に隠れている論理を理解することで、似たような局面でのアクションや、想定と異なるアクションをとるプレイヤーに対する戦い方を身に着けることができます。
そこでOpen raise時において、各ポジションでどうして参加レンジが異なるのか、その理由をご紹介します。
各ポジションでどうして参加レンジが異なるのか
Open raise時の各ポジションでの参加レンジを考える際に重要な点が大きく2点あります。
①自分がOpen raiseをした後にアクションを控えているプレイヤーの数
自分がOpen raiseをした後にアクションを控えているプレイヤーが多いということは、つまり自分がOpen raiseをした後に他プレイヤーから3betされる可能性が高いということです。
例えば自分がUTGでOpen raiseをした場合、MP,CO,BUが8%(平均的な3bet率)の確率で3betをすると仮定すると、1-(0.92×0.92×0.92)=22.2 約22%の確率でIPから3betをくらいます。(SB,BBからの3betを考慮するともっと高い確率で3betを受けることになります)
この場合、4betを返せるor3betをコールして先にアクションしなければならないOOPの立場でポストフロップを戦えるハンドを一定以上の割合でOpen raiseするハンドレンジに組み込まなければなりません。
(3betにFoldするハンドの割合が多いハンドレンジで戦っていると、相手は適当に3betするだけで期待値がプラスの行動となってしまいます)
そのため、Open raise後にアクションを控えているプレイヤーの数が多いUTGやMPでは、ある程度ハンドレンジを絞ってOpen raiseをする必要があります。
一方でCOやBUなど、自分がOpen raiseした後のプレイヤー数が少ない場合は、当然3betを返される確率も低くなります。
そのため中程度の強さのハンド(3betにはFoldするが、Callされた場合にポストフロップを戦うことはできる強さのハンド)もハンドレンジに組み込むことができます。
なのでUTG,MPは比較的ハンドレンジが狭く、CO,BUは比較的ハンドレンジが広くなっています。
②ポストフロップでのアクション順
プリフロップでOpen raiseするときには、当然ポストフロップ以降の戦い方も想定しておく必要があります。
その際に、ポストフロップを自分がOOP(Out of position、先にアクションが必要なポジション)かIP(In position、相手のアクション後に判断できるポジション)のどちらで戦うのかが重要になってきます。
ポジションの特性に関しては別記事で紹介予定ですが、相手のアクションを見てから得られるIPのほうが、自分のアクション前に得られる情報が多く有利なポジションだと認識してもらえればよいです。
ここでUTG~BUでのOpen raiseを想定すると、前述の通りUTGなどのアーリーポジションではレイトポジションであるCOやBUから3betやCallをされる可能性があります。そうするとUTGはポストフロップをOOPで戦うことが多くなり、(初心者のうちは特に)判断の難しい局面が多く訪れます。
対してBUの場合は、3betやCallを受ける可能性があるのはSB,BBのみなので、ポストフロップをIPとして戦うことができます。そのため、相手のアクションを見てから行動でき、比較的戦いやすいです。
(フロップで相手がチェックした場合は、BetするかCheckしてターンのフリーカードを見るか自分で決めることができる、など)
なのでUTG,MPに比べて、CO,BUではポケットペアやスーテッドコネクタなど投機的なハンドもレンジに含まれており、比較的ハンドレンジが広くなっています。
SBのOpen raiseについて
UTG~BUが全員Foldした場合のSBのOpen raiseに関しても紹介したいと思います。
BUとSBではそれほどOpen raiseのハンドレンジに違いはありません。(Snowieはリンプインも含めたハンドレンジなので他のハンドレンジ表を見ることをお勧めします。もしBUとSBのハンドレンジ表が大きく乖離していたらPCで期待値を計算していない正しくないハンドレンジ表の可能性が高いです)
SBのほうが後に控えているプレイヤーの数が少ないのでSBのハンドレンジはBUよりも広いはず、と考えがちですが、SBとBUでは対BBでのポストフロップのポジションが異なります。SBでOpen raiseしてBBにCallされた場合は、ポストフロップをOOPとしてプレイする必要があるため、レンジを広げすぎるとポストフロップ以降のプレイが難しくなります。そのため、SBではやたらと参加レンジを広げすぎずにBUと同頻度くらいでの参加を推奨します。
応用としての考え方
①②の理由から、UTG,MPはCO,BUに比べてOpen raiseのハンドレンジが狭く、逆にCO,BUはUTG,MPと比べるとOpen raiseのハンドレンジが広いことがわかりました。
では、ここで1つ問題を出してみます。
①②の理由を理解したうえで、下記の問いを考えてみてください。
[問題]
あなたはUTGで参加しています。これまでのプレイからMP,CO,BU,SB,BBのプレイヤーが全く3betをしてこないことがわかりました。(一般的に用いるValueの3BetはすべてCall,Blaffの3BetはすべてFoldしているようです)
あなたは普段と比べてOpen raiseの頻度を上げるべきか下げるべきかどちらでしょうか?
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[答え]
A. Open raiseの頻度を上げるべき
理由:UTGでOpen raiseしたときに相手から3betが全くないということは、本来は3BetされたらFoldするハンドでOpen raiseできるから。本来はFoldするハンド(Open raiseしたら期待値がマイナスになるため参加が推奨されないハンド)が、下記①②などの理由により期待値プラスでポストフロップをプレイできるため
①3betで降ろされてフロップを見る前にエクイティを取られる(Open raiseした分の掛け金をむだにする)ことがない
②本来は相手のBlaff 3betに降ろされるところだが相手はBlaff 3betを打たずにFoldするためSB,BBのブラインドを獲得できる可能性が上がる、
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[参考:リンプインが少ない理由]
本記事ではOpen raiseについて重点的に取り上げましたが、最初のアクションとしてなぜリンプイン(RaiseではなくCallで参加すること)が存在しないのか、参考までにご紹介します。
理由①:リンプインすると参加ハンドを推測されやすい
プリフロップにおいて、リンプインしたいハンドは何か考えると、「レイズするほどではないが、可能であればコールで参加してフロップを見たいハンド」が主として挙げられます。
しかし上記のハンドばかりでリンプインしていると参加ハンドが絞られてしまい、フロップがAK2,AQTのような場合にセットや2ペアになりうる強いカード(AA,KK,AK,AQ,QQなど)が参加ハンドに存在する可能性が低いと相手に推測されてしまいます。(強いカードはOpen raiseしてPotの金額を増やして多くのお金を賭けたほうが獲得しうる金額が大きくなるため)
そのため、プリフロップでリンプインするとポストフロップ以降でハンドを推測されやすく、非常にプレイしにくくなってしまいます。
理由②:リンプイン後にIPからレイズされる可能性が高い
理由①でお話ししたような中程度の強さのハンドがリンプインするハンドには多く含まれているため、リンプイン後にIPからレイズされた場合の対応が非常に難しいです。(Foldするか、CallしてポストフロップをOOPでプレイするか、さらにRaiseを返すか)
リンプインを採用せず、シンプルにOpen raiseのみでハンドレンジを構成したほうが、その後の対応もシンプルになりプレイしやすくなります。
理由③:リンプインとOpen raiseを組み合わせたハンドレンジの構成が難しい
強いハンドはOpen raiseをしてPotの金額を大きくしないと、EVが大きくマイナスになってしまうため、リンプインを採用する場合も全くOpen raiseを行わないことはありません。
そうするとリンプインとOpen raiseを組み合わせたハンドレンジ表を作成する必要があります。つまり、前述したSnowieのPreflop AdvisorのSBハンドレンジ表のように、各ハンドでOpen raise○○%、リンプイン○○%と最適な配分を行いその配分を守ってプレイする必要があります。
リンプインとOpen raiseを組み合わせたハンドレンジ表を使っても、その労力に見合うほどの期待値の向上は見込めないため、やはりOpen raiseのみで構成されたハンドレンジ表を用いることを推奨します。
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いかがでしたでしょうか?
Open raise時に各ポジションで参加レンジが異なる理由を理解していれば、場の状況や他プレイヤーのプレイスタイルに応じて臨機応変に最適なプレイをとることができます。
今後もただ答えを紹介するだけでなく、その答えに行き着く過程や理由を中心に説明していきたいと思います。
もし記事の内容に不明点があれば、別記事のQ&Aにてコメントいただければと思います。最後までご覧くださりありがとうございました!